日帰り波照間島
10/3
日帰り。
トレーニングを目的とし、凪のような風が無い日ではなくあえてある程度の風が吹き、海が少し荒れる環境を選んだ。
西表と波照間の間は水深がある。他の周辺離島と比べ起伏も多くうねりの大きさや流れも変化が出やすい。
海の力には必ず負ける。。どこまで向き合えて耐え戦えるか、自身の身の丈にあった内容を遂行することが今回のテーマだった。
いずれ計画段階の本州で長距離を漕ぐ時の為…
早朝、3時前後に起床。
とりあえず天気予報の再確認。
早朝から昼前まで北東風の風速3〜5m
12時頃から更に強まり東風の風速6〜7m
実際は更に吹くだろう。
4時過ぎに南風見田の海岸に着いた。まだ海に浮かんですらいないのに高揚感と緊張感が高まっていた。長距離や大きな事をする時には限って感じることだ。
海岸手前の森の中、車を降りてヤシガニが足元にいた時には驚いて運転席に飛びついてしまった。心臓が喉から飛び出すかと思うほど驚いた。
夜中の海岸手前の森は苦手だ。車から荷下ろし途中、ボンネットにこっちの巨大ゴキブリが目に見えた時には、頼むから飛んでくるなと(下から上にも飛ぶ)熊から逃げる人みたいに後退りでビビっていた。
準備も一通り終えて、海を前に、遠く先に灯台の灯りがおぼろげに見ていた。もう少し、朝焼けの空かと思っていたけど、真っ暗だった。
深呼吸をして
AM05:00
漕ぎ始めた。真っ直ぐ灯台に向かって。月明かりが何となく波照間まで続き、光に照らされた海を落ち着いた気持ちで漕いで進む。
夜の海にカヤックを乗った経験が少なく、被さる波などないか耳を澄ませながらパドルの水を持ち上げる音だけが聞こえていた。
やっと、遠くに見える波照間の島全体を視認することができた。
風が背中から、北東の風が押してくる。
4mぐらいだろうか。
振り返ると西表は遠く先となり、背中で感じていた風を前から受けると、風が手の平で掴めそうなほどに吹いていた。
AM 08:00
太陽も上がり海から反射した光が顔を炙る。
海の味がするおにぎりを頬張り
空を見上げれば、晴れ渡った眩しい空にアジサシやカツオドリが頭の上をぐるぐる飛び回り、蝶が風に乗って鳥と同じ、南の島に飛んでいく。海にはトビウオがあちこち風に乗って跳ね回り、それに向かって鳥は海に飛び込む姿。
カヤックは海のリズムに合わしたパドリングで、自分自身も海の一部に溶け込んでいった。
海底の起伏も大きくなり小さな三角波が目立ってきた。外洋がもう少しで終わる。
目前近くまで迫った波照間を目指す。ゴールはニシ浜だ。
航路避け、ニシ浜に向けて進路を合したつもりで漕いできたが、思ったより西に進んでいた。
海側から見たら左右横に伸びた島に見え、ニシ浜は思った以上に中心寄りだった。
ニシ浜の海岸は太陽をギラギラ反射して眩しい砂浜に人が点々と見える。
「もう少し、もう少し。」
外洋とリーフとの切れ目にサーフが立ち並んでいたが、リズムを合しカヤックサーフィンをして浅いリーフに飛び込む。
はたから見たら笑顔のずぶ濡れカヤッカーがどこからともなく漕いで来るように見えたろうか。
透明の波照間の水色のリーフは珊瑚と海底の砂がキラキラと輝き、美しさへの嬉しさに顔は綻んでいた。
AM09:00
漕行時間 4時間
漕行距離 30キロ
眩い砂浜に着き、カヤックは砂浜に上げ、海に浸かり身体を目一杯背伸びする。身体は調子いい。
観光の人が集まり、写真撮ってくれた。
港の売店行ってアイスとステッカーなんて買い
防波堤に立ちアイスをわしわし食べながら
漕ぎ渡った西表からの海を見渡す。
白…
AM10:30
観光の人達に会釈をしつつ、青い外洋に向けカヤックを漕ぎ始めた。
波照間の防波堤を過ぎ、東から強い風がきている。手を止める事ができない海だった。
どれほど時間がかかるだろう。
行きの時速と時間から、倍の時間の計算を予想していた。
リーフを過ぎれば真っ青な青の世界が広がっていた。時折太陽の光の束が海底深くに沈んでいくの見下ろし、気が遠くなる程の深い海の表面を霞み遠くに見える島に向かうカヤックは木の葉のようゆらゆらと。。
砕けたうねりが胸の辺りを撫でてくる。
常にデッキの上には飛沫と波が乗る。
海でビダビダになったおにぎりを食べる。一口噛み付いたら、PFDの胸ポケットにしまう。手を止めると自分が漕いだスピードよりも早い流れで流されていく。
中間過ぎた頃からカヤックのスピードが思うように乗らない事に気づいた。
「ハッチ内に浸水してるんじゃ…」
以前FRPで直した箇所があり、そこからか、また違う所からか。
やぼな重量がのしかかる。
(GPSで見返すとこの時が最低速度の3キロだった)
島の海岸や山肌も見え、島陰に入ったのか風も7〜8mの爆風から5m前後に落ち着き、カヤックのスピードは徐々にペースを上げることができた。
「もうこっちのもんだ!」目をギラつかせ腕を振り上げる。身体は至って調子がいい。
遠浅のリーフと外洋との切間に白波が立ち上がっているの見える。出発地点まで距離がまだあることから、地点に向かうまでの途中の海岸へ行こう。外洋の荒れた海ばかりにいると、平和な遠浅のリーフが恋しいもんだ。
爆ぜた白波の間を縫い進み西表の海岸に着く。
「やっと西表だ…」
着岸して外に吐き出した足はよろめく千鳥足。
砂浜に寝転び、生きていることの実感と喜びを感じていた。
喜んでキンキンに冷えたビールを飲みたいし、グビグビと喉を鳴らし、渡ってきた海に乾杯したい所だが、あいにくコーヒーとタバコで癒していた。
漕行距離 61.12キロ
漕行時間 12時間
日没と同時に最初の出発地点に帰ってきた。
これから先やるかやらないか言い切れない事でもあるけど、カヤックでやろうと思うことがある。
波照間に日帰りで渡った事は、カヤックを通じて新しい挑戦に身の丈が合うようになった。
その内容はもう少し、具体的になってから記事しようと思う。
この日は帰ってからのビールが美味かった。