波照間島カヤック島渡り
日本の最南端の島を自分のカヤックで島に渡り、島を周る。いつかはと。夢のような話だ。相応の技術を得たと感じれば行きたかった。
海況を考えたらいつでも行けると言う訳でもない事。
最終的には機会とタイミングがあればとは考えていた。
調べる事はたくさんある。海に出る以上、知らないでのぶっつけ本番は危険性が増し痛い目によくあってきた。
石垣や小浜など周辺離島へ行くのとはまた漕ぐ海が違う。八重山は浅いリーフに囲まれてた島々。今までの各島々へ海の水深は大体20〜30mだ。だからと言って安全という訳じゃないけどね。
「波照間まであっちは外洋だよ」
その言葉をよく耳にする。
周りにカヤックで行った事のある人がいない、噂もない。当たり前だろうけど自分の船や、定期船。普通そうだよな。情報はあまり得れなかった。
海図を元に、西表から波照間までの西の海域は100〜200m。特に深い東側海域の水深は600〜700mだった。周辺離島とは桁が違う。
危惧する事は山程ある。水深700mある海流が100mの水深にぶつかるとどうなるか。
更に風向きにハズレを引いたら三角波ができるリスクもある(三角波とは多方面からの波によってできる名前の通りの三角形の波)
少なからず経験の無い海、片っ端から聞き込みルートを模索した。
ある程度内容も固まり、風が落ち着いて日程があえば行こう。と思った。
6月中旬から7月中旬ぐらいまでは沖縄は夏至南風、方言でカーチバイが吹く。南風の爆風だ。酷い日には10m前後の爆風。瞬間風速は15m以上になる。強烈な瞬間風速がきたら台風と変わらん。笑
そんな日が続き
21日、日食を始めて見た。太陽光レンズ持ってないから雲がフィルターになった時に撮れた。
まぁ波照間はいつかはと思う日が続き…
6/23 南西風速3m
何日も続いたカーチバイが急に止む日が現れた。試す価値のある日が来た。しかも都合良く仕事も休み。
カヤックの準備やら、周りに報告、波照間での宿(客足が少し戻ったのか地味になかなか部屋がとれず不通もあったり何件も電話するハメになった。行けるかも、中断するかも、つまり急なキャンセルもあるふわっとした予約)
予定ルートをざっくり行ったら、西表島の中心からみて真南辺りに進み、そこから南南西に方角を基準に進む予定。真南辺りで中断か進むか判断。
カヤックの準備と確認に時間を費やした。
100%必要な物だけを積んだ。
am06:00出発
湿気がすごいのなんの。出発から10分程で汗だくびっちゃびっちゃ。
南風見田まで慣れた海を進む
内海を進んでいた。南風見田の手前辺りから外海に出ようと思っていた。余分に内側、内側と進む漕ぐ体力を使いたくなかったからだ。
だけど風も吹かない満潮近い潮なのに内海と外海との境界線、リーフエッジは白波が見える。
内海を暫く進めば離岸流のある場所、白波が立たない場所はあるけど遠いなぁ…
「上手く白波の切れ間から外に出れないかな」
進みながら模索する。
リーフエッジ手前からうねりができている。
リーフ内は浅いからうねりも早いし流れも少し早い。
「あそこ行けるかな?」
離れた場所で波を観察して…大丈夫じゃない?
進んでいった。
けどこれ大失敗
リーフエッジ手前のうねりに入った。
「ここだけうねりが大きいな…?」
波のてっぺんに来た時、やらかした。
下を見ると先に白波がもわもわと生まれていくのが見えた。
半端に大きいうねりが奥にあった白波を隠してしまっていて分からなかった。
はっきり言ってびびった。沈(カヤック用語で沈没)リスクが一気に跳ね上がったからだ。
沈リスクどころか、沈脱したらカヤックと離れてしまう最悪なことになる。
今まで沈は何回かやらかした事はある。
デッキの荷物が先に転がって取ろうとした時やふざけた漕ぎ方した時や
危なかったのが白波が後ろから突っ込んできた時。でもこれの原因は、一瞬理解が出来なくて漕ぐパドルを止めてしまったからだ。
この時の事を思い出した。後に戻る事はすでにできない。変に逃げて横から波を受けたらただじゃ済まない。
船首を確実に波に向け、手に握るパドルを離さない、パドリングを止めず進んだ。
うねりの下に来た頃には波は頭より高くなった。
身を低くしてパドルを漕ぎ、強烈な白波を頭から被った。
「よし、こえたぞ!」
マジか、第2波まであった
サングラス越しにぶつかる海を睨み
先に穏やかな海が見え波を越える事ができた。
「やった!」
無事外海に出る事ができた。安全な場所まで進み、振り返ってリーフエッジを見るとどこも白波が爆発していた。
成功した優越感に笑いがこみ上げた。
と言っても行った事事態が失敗なんだが。笑
コクピットの中は海水がたんまり入って、すっかり身体も泳いだ後の様にずぶ濡れだった。
海水を掃き出し、携帯食をつまみ進んだ。
外海は穏やかだった。小さなうねりがあったけど問題もない程だった。先に鹿川が見える。
島を右に海をパドリングして進んでいった。
西表島の真ん中から南、とうふ岩辺りから南に来た所だ
西には鹿川湾すぐ近く
時間にして9時前
行くか中断するか判断する
「よーし行ってみるか」
海況は安定している。穏やかだ。
携帯の電波があって、連絡済まし
一寸先は海へ
南風見田の浜に立った時や、道路の高い所からも波照間島は見えていたけど、背の低いカヤックでは波照間は見えなかった。
手に持つ小さなコンパスで南南西を確認しつつざっくり表示だがスマホでGPSも確認して進んだ。
海の青は進むにつれ深い青いになってきた。太陽の当たり方に変化が出てきた。
こんなキレイな青を目の前に見たことがない。
海の色は進むカヤックのデッキと同じ様な青さだった。手にすくっても透明なのに不思議に感じた。
次第に暑さがキツくなってきた。
太陽が少しづつ高い場所に上がりギラギラ照らし始めた。
海がチカチカ光っている
とにかくパドリングの手を止めなかった。
休憩したくなったらするだけど、ひたすら進み
後ろを振り返れば西表島が見え
向かう先は見えない島、波照間島。
外洋のど真ん中にいると不思議な感覚がある。
星から星へ向かう宇宙船を操作してるような、そんな壮大な事のよう、島へ渡るストーリーを感じる。
10時40分頃
やっとだ。
波照間見えたぞー!!!
拡大写真
少しあるうねりが島を見えなくしていた。
少し休憩を取った。気楽に休憩できるタイミングだし、先の海況が爆発したら休憩ができない
茹でたとうもろこしを半分食べ
5個入りぐらいのくるみパンを2つ。
パンを食べながら…
「飲み込めない…」
口の中から喉の奥まで乾いていて、更にパンなんて食べ奥まで入らない。
気持ち悪くなりそう。
無理して2つ詰め込み飲み込んだものの、お腹に入っても消化しないのかゴロゴロしていた。
気持ち悪いまま進み、暫くするとうねりに変化が現れた。前からのうねりと横からとうねりが発生していた。うねりは砕けないものの、不規則な海になり海流に変化も始まり海の流れも西に感じた。
うねり変化が始まってから
一気に気分悪くなった。
最悪だ、船酔いが始まった。
殆ど食べてないからげーろげろにならなかったけど、永遠こみ上げがキツかった。
おえおえ開いた口が閉まらない。
パドリングの手が止まる。
頭の上には4匹ぐらい海鳥がぐるぐるずっと飛んでいる。
それを見るだけで目が回る。
とにかくお腹の異物感を我慢しながら
漕いでは止まって、漕いでは止まって繰り返す
11時40分
波照間の全景がはっきり見える。
うねりはまた変化があった。カヤックの左後ろから来るうねりが多くなってきた。
後ろからのうねりは好きじゃないけど、規則性があって判断もしやすくなった。
お腹の異物感も消え、海も安定してきて船酔いは薄れ楽になってきた。
島の地形や建物も良く見え、距離も10キロ切ったぐらい、あと少しだ。
分かる人には分かる話だけど。見えてある程度近づいてからが遠く感じる。カヤックの時速、キロで言ったら10キロ以下。お喋りしながら漕いだら5キロのスピード。多分普通に漕いで7〜8キロぐらいかな。
目の前まで来てるのに着かない、何度も経験しているから分かっちゃいるが精神的に辛さが降りかかってくる。
予定のニシ浜から少し外れている。船酔い事件から休憩の頻度も上がり、西から東への流れで流されていた。着岸予定のニシ浜へは、港前、航路を渡る必要がある。ふわっとした現在地、微妙に島から外れた位置から渡るには危険性があると判断してニシ浜から港跨いだリーフを目指す。
リーフ、内海に着いてから港を横断。この瞬間いつもドキドキする。音だけならまだしも、見えてる位置に船がいたらヤバすぎる。
そしてやっと
波照間島上陸ーー!!!
着いてまず海に漬かり浜で寝る
感無量。
最高。
全身砂まみれ。ポケット砂まみれ。
それでいい。
観光客の人が見る、集まる。
自販機どこにありますか?
観光客に会釈しつつ、前に建つ宿の自販機でコーラ買ってニシ浜とカヤック見ながら
コーラうめぇ
7時間だ。7時間。
うねりが更にデカかったらもっと時間はかかっていたな。。
待機してもらっていた宿のおじさん、西表島の人々に連絡を済まし、観光の人と話をして
また
トレック430に乗り込んだ。
時間は13時半。まだ体力は…
行ける気しかしねぇ
さぁ次は波照間島をカヤッキングだ。