カヤック旅 石垣島一周 中編
2月16日北東風5〜6m
10時半頃出発
16日の天気は安定するようだけど
17日の予報が風速15m以上となっていた。雨も降り、それだけ風が吹けば余韻のシケもあって18、19日も?風速予報8m前後、暫くの停泊が予定される。
周りに何もない海岸場所で停泊は嫌だし、何より3日もテントに篭りたくはない。
水場と東家があって風を凌げる場所である米原キャンプ場を目指す予定をたてた。
吉原海岸からは山原海岸(クリスタルビーチ)を過ぎた先に米原キャンプ場がある。
吉原海岸のリーフから外海に出る時。
白波が立ちにくい広めの離岸流があるため外洋に出やすかった。
少し漕ぎ進み、クリスタルビーチ辺りを見渡すと白波が連なって上陸はできないようだ。。
吉原から米原キャンプ場まではさほど距離はない。5キロ程度と予測してのんびりと気軽な感じで漕ぎ、米原のビーチを前に来た辺りでリーフに入る場所を探した。米原は石垣島で1番の海水浴のポイント。さぞ人も多くと…見渡したけど人集りはいなかった。泳ぐ人、散歩する人、サーフィンする人が数える程だった。泳いだり魚取りするには良い環境だろうと思い漕ぎ進める。
北風の影響で全体的に白波も立っているけど、波の大きさが小さい場所を判断してリーフ内に入っていった。サーファーが「どっから来たんだ」と言わんばかりの視線を前にカヤックで波をサーフィンして、穏やかなリーフを漕ぎ海岸に着岸。
観光客がいない米原海岸にて。
久しぶりに米原海岸から陸地側、キャンプ場になっている側を歩いてみると、トイレや炊事場などに張り紙が目立っていたのが気になった。
「許可無き者海岸への進入禁止」
「長期キャンパー禁止」
「国立公園により以下項目を禁ずる」
こんな場所で許可取ってまでキャンプするか?と考えながら道路側の入り口に向かうとゲートもされていた。
近所の店にキャンプしても大丈夫かと聞いてみたけども、対応先が違うようだったようで、面倒なのかやるせない対応だった。
適度にお礼して自販機でコーラを買って海岸に戻り
この場には縁がなさそうだと思った。仕方ない。頭を下げて申し訳なくなりつつキャンプ場を開けてもらう気にならなかった。
米原キャンプ場を後にし、向かう先は船越漁港を目指す事にした。
船越漁港には行った事がないが水場ぐらいはあるだろう、漁港なら風下になる場所も見つけられるはずだと考え…。
「まー何とかなるだろ〜」
「運が〜悪けりゃ〜死ぬだ〜け〜さ〜」
懐かしい曲を歌いながら。
米原を過ぎ、野底周辺の海を進んでいった。
振り返り遠くに見えるのは川平の岬が見える。
真っ直ぐ外海漕いだらあっという間に進んだろうな。
ついでに寄りたかった場所があって野底には吹通川というマングローブが生い茂る川があるので寄ってみたけども、潮が引いてしまって近づく事も出来なかったのが失敗した。
海岸で休憩を取って過ごしたりとして、船越漁港まで漕いでいった。
漁港内は静かで周りを見渡しても人の気配があるか分からなかった。スロープにカヤックを着岸して漁港内を歩いた。
漁港内の小さな桟橋に屈んで作業する人集りを見つけ、漁師らしき真っ黒に日焼けた顔でいかにもな感じであった。漁港にテントを立てていいかとだけ聞いて軽く承諾してもらい荷物を移動した。
漁港内は児童公園も併設されていて芝生が広々としていた。水場もトイレもあるし楽に過ごせそう。来ないと思うが子供達でいっぱいになったら…まぁ楽しそうか。
広い芝生の隅っこにテントを立て、念のためカヤックは海から陸地まで担ぎ運んでおいた。
「明日ほんとに15m以上吹くのかな」
生存連絡を済まし、あれこれ準備をして暫くして友人が車でやって来た。
天ぷらと唐揚げにじゅーしーを差し入れに持って来てくれた。
友人には頭が上がらない。差し入れも含めモバイルバッテリーの替えまで持ってきてくれた。
この海旅を一番に応援してくれる人だった。
少し話、公園の手を離すと止まる蛇口を捻ってもらい久しぶりに石鹸で洗髪をした。
魚(ガーラ)も漁港で釣り上げる。
夜食は刺身と汁物を作り、取り皿とかそんな物は無いので、メスティンの蓋とケースを皿に、刺身はシェラカップの淵に並べて真ん中に醤油を溜め2人で食べた。
「釣ってすぐの刺身はまた美味いな〜」
「んな天気いいのに明日ほんと荒れんのかな」
夜が更けていき漁港は灯りが少なく、ランタンの灯り以外周りは暗闇だった。空は星で明るく、星の川が流れていた。
友人は帰りほろ酔いになってテントでぐっすりと眠った。
2月17日予報風15m
時間は分からないけど、おそらく3時頃。目が覚めた。静かだった空が嵐のように吹き荒れだした。雨は降ったり止んだり。降ればバケツをひっくり返したような豪雨そのものだった。
止んだタイミングでカヤックを見に行って大丈夫そうでホッとした。
キャンプにマットを持ってきてないから、何となし底から浸水が…見て見ぬふりをしてそのまま眠りについた。
目が覚め、寝袋から出ると寒く雨は降りそうな空ではなかったけどどんよりと曇っていて、出る気も無くコーヒーを作り、テントの中で寝袋に包まり昼まで読書していた。
近くに商店はあるだろうかと思い漁港から道路へと散策に歩いていると、漁港を出た左側に商店が見え歩いていると
「おーーい。おーーい。」
歩道の反対側の建物から男の人が手招きしていた。手招きに合わせて建物の中へ入ると、70代の漁師らしきおじさんと手招きした50〜60代前後のおじさんがコーヒーを飲んでいた。
建物もさる事ながら、中も異様なものだった。
シャコ貝やタカセ貝などの抜け殻が敷地内に散りばめられている建物で、その数が尋常じゃないほどに。横に手作りパトカーが置いていたりと怪しげな場所だと以前から知っていた。
漁師の人はショウキチと名乗り、手招きした人はサカグチと名乗りどこから来たのかと質問攻めにあった。建物は以前まで老夫婦が飲食店を経営してたようだが、亡くなってしまいサカグチさんが借りてるようだった。
ショウキチさんが「君が寒そうに歩いてる姿を見てなぁ、コーヒーを飲ましたくなったからさね。声をかけたんだよ。」
その日の石垣島は15℃前後で風も強く吹き、体感温度は下がる寒空。7分丈の短パンとヒートテック1枚の俺は寒過ぎた。
「港にテント張ってる人ってのは君のことか」
「カヤックでどこからか現れた人だよな」
ショウキチさんは「何処から来たんだ」と尋ね「西表島ですね」と答え驚いていた。
ショウキチさんは船越を拠点に飲食店の経営と、漁師として電灯潜りのと釣り船をしているようだ。電灯潜りとは夜の海に潜り、眠っている魚を突く海の男だ。
サカグチさんは…この人は不思議すぎる人で、自称プロデューサーと名乗り、怪しい仕事の話ばかりだった。
コーヒーを頂いた後、八重山そばも頂いた。合間にトイレを借りた訳だが…
便座に座ると自身までも物言わずの貝になったようだ。
ショウキチさんが「夜はうちにご飯食べにおいで」と言い、有り難くご馳走になることにした。
夜はショウキチさんのお店で2人で食事を頂いた。その日は他に客はいないようで、そーめんチャンプルや刺身や、他にも色々な料理をご馳走頂いた。冷たいビールが喉を潤し、すぐに2本目をプシュ!っとカカーッと喉を流れていった。
餌をあげるショウキチさんに集まる熱帯魚
酔いもお互い回りつつ
「カズヒサくん、海は誰しもが…全ての人が海から産まれて…海は母なる場所なのだよ。」
「海に愛されるか愛されないかは君次第だけど、時には試練も与える。向かい合った時決して諦めないように…」
島酒でフラつく手つきに足取りもふらふらになっていたけども、目は輝いていた。
千鳥足でテントに戻り寒空の夜を眠った。